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パキスタン見聞録

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水民直見のパキスタン見聞録
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「息子の結婚式に是非出席してください」

naomiVertical2.jpg2005年2月、私たち3人は友人であるマスード氏の招待に応じ真冬のイスラマバードへと向かった。
一行の一人丹野さんはマスード氏とは親友の仲であり、50度という酷暑の時期に一度マスード家を訪れているが、岩本さんと私はパキスタンへは全く初めての旅となった。時期も重なり日本でのパキスタンの印象は決して良いものではなく、私の場合多くの友人から心配や、時に嘲笑を受けての出発となった。

成田からパキスタン航空を利用し北京経由、十数時間を越える苦痛の長旅の末イスラマバード国際空港に到着。空港にはマスード氏の娘婿が出迎えてくれていた。
日本で言えばどこかの地方にあるようなシンプルな空港である。好奇の視線を向ける人々の群れを掻い潜り、空港の周囲を包む闇を抜けると車は快適な道を走り始めた。しばらく行くと窓外はきらびやかではないがビルやホテル、ショッピングセンター等の明かりが明滅し、整備された都会の景色に変わり始める。大通りを進み大統領府や政府機関が立ち並ぶ「ブルーエリア」に入ると間もなくマスード氏宅の所在する街区に到着した。
武装した衛兵に守られたゲートを通過し車は止まった。 周囲には立派な家々が立ち並んでいたが、目指すマスード家は花嫁を迎える家に相応しく美しいイルミネーションが施され、人々のざわめきですぐそれと知れた。naomi4shot.jpg

婚礼のセレモニーは毎日違うテーマで一週間催されるとのことで、私たちが到着したこの日はいよいよ翌日一族揃って車を連ね、ペシャワールにお嫁さんを迎えに行く一大イベントを控えた日であった。遠方から多くの親族が泊りがけで訪れていたため、私たち3人のゲストルームは隣にある親戚の屋敷に用意されていた。広いワンルームの手前にはツインのベッドが置かれ一緒に行った男性二人のスペース、奥まってステップを数段あがるとまたもや広いスペースがあり、ヤッター!私一人のためにクイーンサイズのベッドが用意されていた。
男性二人のブーイングを尻目にクローゼットを開けると上質な仕立てのパキスタニードレスが数着かかっている。「これは私の妻からあなたへのプレゼントです。どれでも好きなのを着て全部日本にお持ち帰りください。」とマスード氏はにこやかに告げた。
昨年日本でお会いしたときの印象は「謎の印度人」&「気のいいおじさん」といったものだったが、ここでは彼は堂々として一家を取り仕切っている家長であり立派な邸宅の主であった。一息ついて直ぐマスード家に向かった。mizutGroup2.jpg
夜風に乗って運ばれてくるシシカバブやローストチキンの香りが鼻をくすぐる。門を潜れば庭一面に美しい天幕が張られおいしそうな料理が並ぶ。ここでも銃を持った衛兵が護衛していたが違和感は無い。
日本から来たと紹介されると、誰も彼もが懐かしげに声を掛けてくれ親切に料理を取り分けてくれる。日本で食べるインド料理と似て非なる本物の美味しさだ。スパイス類の酔わせるような香りが脳を刺激し長旅で疲れた体に染み込んで来る。
異国を訪れたのだという嬉しさと感慨がこみ上げてきた。イスラム教の国なのでもちろん禁酒である。セブンアップやペプシ、ジンジャエールなどでみんな思いっきり盛り上がっている。
腹ごしらえをしっかりした後屋内に入ると花婿を中心に大人も子供も男も女も着飾って大いに盛り上がり音楽にあわせて踊りまくっていた。私たちもまた踊りの輪に引き入れられ一族みんなと喜びをひとつに時の経つのを忘れたのだった。